水の遣りすぎ
「ねえ、手え出して」
「ん」
「んーん」
「手だよ」
青年の手を取って無理やり指を絡めてから、少女は満足げにチュッパチャプスをぺろりした
青年は煙草を吸い、少女は真似て飴を舐める
「手え冷たいね」
「冷え症なの」
そっちかあ、と少女は思うのだけど口に出さない。驚かないのね、わたしはどきどきしてるのに。たかが手を繋いだくらいで、とか言わないでよね
ばーか、呟いて青年の髪をぐしゃぐしゃと撫でるさまはしっくりくる。ふたりは仲良しだ
甘えてみたのだから可愛がって?と言おうとしてやめた彼女の頬はアルコールによって紅潮していて、少女は少女と自称するのを躊躇いだす
わたしから見たら彼女の一部は確かにきっと少女なのだけれど
始まらない恋もあることを、まだ少女は知らない
090416+加筆訂正