習作

君はどうして僕の夢から這い出てきたの、夢は夢のままでって思っていたのにそんな風に登場されたら敵わない。それなら実態を伴って見せて、ガラスの煌めき、遠くの声が蝉の求愛、君は誰より素敵なにんげん、アンドロイドみたいでとっても愛しい。何度も何度も殴打して繰り返すたびに嘔吐して辿りつけなくて音速よりもっと先の話をしている。不自然で不親切で不透明な音楽みたいな僕らの関係性。水に触れば溶け出す丁寧な紙。何かの花と同じ色だと言ってたけれど肝心の花の名前が思い出せない。そういうことを許さないで欲しいのに慈しむように微笑むから君と僕はふたりのままで、もちろんひとつになりたいわけじゃないのに、それでも輪郭線を淋しく感じるのはどういう浅ましさだと言うの。いっそ水溜りに落ちてしまえば線条だって絡まるかもしれない。そうして絡まって柔らかく解れて、静かに見失う未来。死ぬまで愛してあげたから、死ぬまでには消えて欲しい。僕、ここにいる、花の名前が思い出せない。適当な花を千切って水に浮かべた。花も羽も大差ないなと欠伸をしたって終わらない、殴打殴打の蝉の音、分け合って口付けた逃げ水。