2008-01-01から1年間の記事一覧

arabesque

「リリイを聴かないと僕は眠れないんだ」男はそう言ってiPodを取り出した「これを聴いてるときだけ、夜に愛されてる気がする」。映画は好きじゃないんだけどCDはいいよなーと呟いてから、寝る前の一服。 「わたしは、映画も好きだけど」 「意味わかんないじ…

曇天の存在

いつも窓は曇っていた。窓の外も曇っていた。だから帰結する感情は今日も曇り。曇りのち曇りのち曇りのち曇りのち 晴れるのを待っていた、仄暗く色付かない真四角の空間で。 生きていた、とかげのように慎ましく、金魚のように悠々と、カラスのように神経質…

移転完了のお知らせ

当文芸創作ブログ「ashita asatte shiasatte (a.a.s.)」は此処に移転しました。 昔から見守ってくださっている方も、新しく見守ってくださる方も、どうぞ宜しくお願い致します。 移転ついでに、今まで別の場所にひっそりと置いてあった文章を少しだけあげま…

こんな観点

「雨だね」 「うん」 「でも雨が降ったんじゃないよ」 「うん、知ってる」 「僕たちが降らせたの」 「うん」 彼はたまにとっぴなことを言うから私はときたまついてゆけなくなる。 気持ち悪いおとこだねってみんな笑うけれど、私は真顔でそんなことを言ってみ…

日常

わたしの網膜が映すのは薄い闇で太陽に透かすと血が見えた 瞼 風でカーテンが音を立てる あぶみ骨 午睡 社会的に死んでいるということ 永遠に微睡み続けるということ 明日も 明後日も 夢も見ず ただ孤独に耐えるということ あ、麦茶。

スロウカプセル(改)

友達が笑いながら手を振って落ちる。落ちてきている。 「あ、ばか」 僕はそれを冷やかに見つめる。先ほど近くのコンビニで購入したラッキーサイダーを飲みながら。フルーツの味が濃くて、炭酸が弱い。おまけに「あ、ばか」と言った所為でむせた。アンラッキ…

ぶつぶつぶつ

最近ことばが枯れてしまった、と思うわたしからことばと言うことばは搾り出されてしまったみたいしづかな夜が少ない所為にしたいざわめく精神を宥めるのが下手になったことにしたい最近ことばが枯れてしまったわたしのことばはもう枯れてしまった どこにもで…

東京キャラメル喫茶

池袋、満天。それはあたしのあのこが大好きな、束の間の休息の場の名前。あたしも二回だけ連れて行ってもらったことがある、二回だけ。 プラネッタリユム。 あたしたちは気狂いのような熱視線をもってドームを見つめていた、いつも(あたしが知りうる範疇で…

赤いスカーフの純情

真一文字が少しずつほどけて三日月になった歯触りのいいクッキーより優しいきみの笑み粘膜に触れて甘くとけたよ 唇が欲しい一瞬前、春一番でカーテンが翻ってきみがその中に消えたから。この恋は実らないって、同じく翻ったセーラー服の襟が囁いたのが聞こえ…

休日

忘れ去られたその中でわたしはあなたを見捨てないから愛在る生活愛編む死体 呼吸をして泣くことすら上手にできなかったんだ真昼間、布団を干そうとも思えないまま

天使の詐欺師

――泣かないでいいよ 街は荒野で行くしかないよ行くしかないよ 僕の大好きなあの子はとんだ天使でとんだ詐欺師だった。膣がふたつもあってさ、こっちは僕ので、あっちは本命くんのらしい。彼って誰だよって問い詰めたら渋々「……弟。」だってさ、本命は弟くん…

落ちるは、光の帯

空が落ちてきた、その日は唐突で。 明日なんかすっぽかして明後日がきたみたいだったよ ひかりは紫から紫へ輪廻転生カラフルで、わたしは虹は何色なのか数えようとして眩暈に教われ救急車に運ばれた。 隊員達もみんなくらくらしていて、ほら、なんせ空が落ち…

自虐セクシャル

例えばあたしが三回嘘をつく間きみは五回嘘をついているあたしはいつもそれが淋しく哀しく手首を切った何度も何度も切った手首を切った膣の中には嘘が詰まっており子宮頸部には届いていなかったがまた子宮の中には何かがあった月に一回剥がれ落ちた 性交の経…