2007-01-01から1年間の記事一覧

瞬きより曖昧な

くすんだ快晴の夜空では珍しく星が見えたよく見えたんだ アタシは山手線を降りる地味に風俗がはびこる汚らしい街、でもそんなに悪い街じゃない裏道にさえ行かなければ暗いだけでどうってことないからわたしは堂々闊歩する「お前みたいな女には住ませたくない…

スロウカプセル

友達が笑いながら手を振って落ちた。落ちてきた。 「あ、ばか」 僕はそれを冷やかに見つめる。彼女は「えええ」と目を丸くしながら落下してくる。ここで抱きとめたら流れで付き合うことになるような気がした。だから僕はあえて真逆の行動をとる、なぜか。 「…

何処にでもいる男女のはなし

昔何度か寝た男の部屋では束の間の自由が与えられていて、私は失礼にならない範囲で彼のコンパクト・ディスクの山を漁ったものだった。今考えると彼の部屋は結構な宝庫で、当時の私が適当に扱ったいちまいはとうの昔に絶版になったものだったりした。こんな…

虐待

あなたの柔らかな舌で誘い出して欲しいのはわたしの縮こまった舌なんかではなく、もっと汚いどろどろした粘度強の沈殿した憎しみ。あなたの柔らかな舌で傷口をこじ開けて欲しい、ふちをなぞって癒して欲しいなんて今更思いやしないよ思いやしないただ漠然と…

レディガール

アタシの恋はどうしてかいつも上手く行かなくて、というか可愛げがない。あーあ、ひとつかふたつ、みつよつ上の人が良いなあ、或いはダンディなおじさま。ななつ上とか絶妙に世代が合わないし、なんだか怖い。もっと恋煩いで身を焦がすような恋愛がしたいの…

こひわずらい

こんなにも君のことを知らないし ひとなんて大嫌いだというのに わざと返事をしなかったりして ずるいあたし らしくないわ いい気になってつけあがってるけど ごめんって言われるのは目に見えてる つい本物だと思いこんでるだけ こっぱみじんのイミテーション…

「ひとりにしないで」

喉元まで出かかった言葉をウイスキイと一緒に流し込んだ 苦くて芳醇なべっこう飴をさらさらに溶かしたような液体は思ったよりすんなり体内に滑り込む 蛇のように奥へ落ちてゆく 食道と肺がじわりと溶けてゆくような息苦しさ ウイスキイを選んだのは正解だっ…

シルヴアニアフアミリイ

あの暗闇にわたしがみたのは薄汚れぼやけた白い染みみたいな光で、まあその程度の光なんて結局はなんの救いにもならない、染み以上にどうでもよい存在だった泣き叫んで腕を伸ばす子供を聡明そうな父親が背中をさすって穏やかに諭す。突然、奥でぶるぶる震え…

ねええ

ねええ手を繋いで眠ろうきみの不眠とわたしの過眠をはんぶんこしよう体温だって行き交うんだから二人で一緒に過眠症になってもいいね手を繋いではぐれないようにすれば夢で会えるよきみがいればこわくないから手を繋いでようね二人で一緒に不眠症になったっ…

掌握

絵描きになりたい、絵を描くしかできないから びっこをひいた女は穏やかにそう思う 名前なんてものはいらないだろうから ノーネーム、それをペンネームにするの 不細工な幼児を描きながら ひとりで女は珈琲を啜り ロマンチックな嘘を吐いた男を思い出してい…

「為す術もなく呆然と」

為す術もなく呆然と立ち竦んでいる間に銀のペディキュアの見えている裸足と床のような地面とを誰かが赤い縦糸と青い横糸で縫い合わせてしまったからわたしはいよいよ身動きが取れなくなってしまうという罰と抱擁

うつつ抜かしごつこ

もうだめああもう爪先まで - - - わたしはからっぽだれかでいっぱいするしかしらないからっぽしんくうひだりめあげるの - - - 淋しい、と言うより独りだな、そんな朝だあれもいないんだ痛感させられる乱暴暴力的な錯覚なのか 無知の知と鞭打ちとても似ている…

虚実混濁

夜明けにわたしはあたしにメールした。わたしとあたしは朝がくるのを待ちながらメールをした。わたしとあたしは不思議な一体感でわたしとあたしになった。わたしはあたしのメールを読み、まるであたしはわたしみたいだなと思った。 思い出してほんの少し泣い…

思考ミスト

目が覚めて真っ先に感じたのは後悔の念だった。目が覚めなければよかったのに、そしたら無心でいられたのに。手持ちの薬を全部飲んだらぼうやりできるだろうか、と考える。駄目だ、そんなことしたらオーヴァードーズと間違えられかねない。いや実際それはオ…

繰り返す一度目の夜

或る男の十代最後の日、わたしは薬の量を倍にされ、より強いものに変えられた。それはわたしをほっとさせもしたし、絶望させもした。まあ結局ある種の開き直りでわたしは笑顔でハルシオンを噛み砕く。苦い、苦いや。眠気が覚めた。 居てもいいよと言われて泣…

吉祥寺サイケデリック

シックなキッスとポップなキック、どちらが欲しい?と僕は問う。 君は「不埒なエッチ」と笑ってから 「破廉恥フレンチキッスにしよう」なんて、夕飯を決めるようなスキップのタッチで朝方のひとこまを描く。 僕はふしだらみだらな女は嫌いなので、ついでにセ…

青眩暈

「またね」と受話器を置いた6:00am、暑さゆえの吐気と長電話特有の心地よい倦怠感の中で靄がかった思考。 さて何をしてたんだっけなとごろごろしながら考えて、枕代わりに敷いていたパジャマの存在を思い出す。そうでした、 4時間以上前のわたしはお風呂には…

liar

嘘吐きを自称するくせにあなたは嘘なんかまるきりつかなくて唯一の嘘は「ぼくは嘘吐き」そのことばそれは自己防衛ですかそれとも怖いのですかあなたは果して嘘吐きに分類されるんでしょうかそして静かに近親相姦の夢をみる

やることがないので薄荷煙草咥えて縁側で泣き真似をした泣き真似をしていたらきみのこと思い出して少し哀しくなって一杯哀しくなって気休めにベージュのシートの錠剤を飲んでから少し考えてビスコをひと包み持ってくるこっちの方がだいぶん優しい朝焼いたホ…

マアヴル

自虐と自己愛に大した差は無いなってくだらない歌を聞きながら思う。カナル型のイヤホンは耳の中の圧力がおかしくなるからだろうか、どうも聞いていて酔ってしまう。でもアルコール代わりに音楽を聴くのだからそれでいい、正常な判断なんてぼくは求めていな…

i want to be girllllllll

やきもちという言葉の存在を半分くらい忘れ、嫉妬と漢字で書けるようになったとき、私は自分が成長しつつあることを自覚した。 いけない、このままでは少女でいられなくなってしまうわ! 私は慌ててアリスシリーズを全部読み直した。モモも読んだし、星の王…

充満

とても哀しいことばが思い浮かんだから、万年筆とスケッチブックに手を伸ばした。 柔らかくざらついた紙に万年筆でそっと触れて、しかし言葉はひじのあたりで止まったまま、文字にならない。まるで紙魚が食ったみたいに、インクが染みてゆくだけ(じわりじわ…

三拍子の思い出

あたしは十六のとき、ぢゅんに教わって初めて三拍子というものを知りました。イディオットという題の曲ばかり聞いているあたしに同情したぢゅんはあたしにワルツを聞かせてくれて、あたしはその新しい感覚に陶酔。 なんせ、聞きながら歩こうとするとうまく歩…

xenophonia

蝸牛にどくどく流し込まれた一語 「 ろ く で な し 」 柔らかいささやきだったはずなのに 思い出すと金切り声にしか聞こえない苦痛 ああ愛してたよ、愛してた 嘘! 全然愛してなかった ちっとも好きじゃなかった おかげさまで顔も名前も髪の色も思い出せな…

歩行、思考、邂逅

街を歩いていて不意に鼻腔に流れ込んできた空気の匂いが、何の匂いなのか思い出せなかった。消毒液の匂いのような気がするけれど、よく研ぎ澄ませてみれば珈琲の匂いのような気もする。 まあ、なんでもいいし、どうでもいいんだ。 とりあえずその冴えない路…

言葉遊び〜めくら編〜

しぬほどしにたいよるはたまにやってきてふたつの肺をごっそりと満たす 私には真夜中なんてやってこなくて夜中のつぎはもう夜明け 小文字と大文字と顔文字について口論をし半ば喧嘩別れとなったその夕方それでも私は君が好きだときづく 折れたヒールをハンカ…

言葉遊び〜早起き編〜

穴を掘って頬張りつづける偏頭痛ちくりと痛んだ次は虫歯でしょうかデンタルデンタルデルタ地帯こんにちは白人のみなさま 嘘を吐く高い鼻に乾杯夢が汚れているのでなく 夢に汚されているのですよ獏が食べるべきはそれでないわそれでない わ た し あなたの所…

供述

過剰な感情の矯正を強制される(駄洒落じゃないのよお洒落なの)日々に、駄々捏ねながらも、まあそこそこうまいことやってきたわけ。おわかり? わからないでしょうね、あなたみたいな人にはね。いいえ別に特殊ぶりたいわけじゃないのよ、でも切手に感じるエ…

精進と肉退

私いまから退屈な話を二三並べてみる覚悟だけど、あなたの覚悟はいかがかしら、まあいいわ所詮独白のようなものであるにすぎないからね、本当のところここにあなたは必要ないのかもしれない、でも一人芝居にも裏方さんはいるでしょう、それと同じで、だから…

甘い毒

「つぎ嘘吐いたらあたし蜂蜜のむよ、のんであんたにキスするよ」 先日、彼女は髪を黒に戻した。ふわふわのパーマも甘いブラウンも捨てて、ストレートの黒髪ボブ。そして、中身も大分かわった。それもとびきりたちが悪い方に転んでしまったようで、隙あらばそ…