xenophonia


蝸牛にどくどく流し込まれた一語


「 ろ く で な し 」


柔らかいささやきだったはずなのに
思い出すと金切り声にしか聞こえない苦痛
ああ愛してたよ、愛してた



嘘!



全然愛してなかった ちっとも好きじゃなかった
おかげさまで顔も名前も髪の色も思い出せなくて
でも何故か誕生日だけは覚えてる
数字は正直だっていうそれだけのはなし お笑い種にもならない



雑踏で擦れ違った赤いランドセルがこっちを指差してかけてゆく


「あのひと絶対あたまおかしい!」


なにいっちゃってんの?とか思ったけれど
考えてみれば自分は頭がおかしい人間でした


「お嬢さんの洞察力は素晴らしい」


振り返りざまにそういってやれば、彼女はきゃあ!と逃げてゆく



その きゃあ! と ろくでなし に大した違いはないのだと
不意に気付いた今日なんだ。



(xenophonia:奇声)