虚実混濁


夜明けにわたしはあたしにメールした。わたしとあたしは朝がくるのを待ちながらメールをした。わたしとあたしは不思議な一体感でわたしとあたしになった。わたしはあたしのメールを読み、まるであたしはわたしみたいだなと思った。
思い出してほんの少し泣いてみせたりした。



昼、携帯が鳴った。わたしは手繰り寄せ電話を取る。それはあたしに置ける彼のような存在の、わたしに置ける彼からだった。
屈託のない声、もういいよ遊ぼう、また遊ぼう、彼はそう言い、わたしたちは他愛ない会話をした。くすくす笑いながら話した。茶目っ気だろうか、切って尚彼は再びかけ直してきて、わたしを笑わせたりもした。



あのこがあたしになってしまったからだろうか、夕方にそんな夢を見た。あたしはわたしにならないでね。「あ」が「わ」になったらだめだよ、最初と最後だからね、わたしはわたしだから、最後の方をもう貰ったからね。
あたしはあたしで居てね、わたしはリアリティのある携帯越しの声の感触に少し泣いて、泣いて、凪ぐまで泣いた。


そんなわたしが、わたしは嫌いだ。