瞬きより曖昧な


くすんだ快晴の夜空では珍しく星が見えた

よく見えたんだ



アタシは山手線を降りる

地味に風俗がはびこる汚らしい街、でもそんなに悪い街じゃない

裏道にさえ行かなければ暗いだけでどうってことないからわたしは堂々闊歩する

「お前みたいな女には住ませたくないわ、ここ」と男は笑った

この部屋で同棲しようだの下北でルームシェアしようだの合鍵あげるだのあげないだの

一貫性がない男がアタシは嫌いだった、好きだった、…なんてことなかった



好きなのは体温だけ、とか言ったら怒られるかな

ほんとはあなたのじゃなくてもいけるの

……女は否アタシは汚い

汚い女だ




「足開いててよ」



彼はゴムをつけながらいう

噛みちぎりたいくらいその後ろ姿が嫌だ



「濡れてるよ」



意志じゃない

生理現象だよ、ゴムつけた時点で動物としては不毛な行為になりさがったけれど



「入ってる?」



狭い部屋に生臭いにおいが充満

わたしはなんだか漠然と呆れながら泣きも笑いもせずに「あ」とこぼす

「あーあ」の「あ」でしかない



「ねええ、今日は流星群なんだよ」
「あ?」
「ちょうど今頃」
「はは」



わたしばかりいかされた

彼は結局いかなかった



「はああ」

(よくない女だよて先に言ったのに)



星の見えない街で

それでもカーテンを開ければ見えたのだろうか

知りたくないから行為に走ったのかもね



星が

星が見たかったんだ



「知ってる?昨日うちらがしてるとき、流星群ピークだったんだよ」
「へえ流れ星きてたんだ」



あの日男の肩越しに

流れる星が見たかったんだ




(……誰もいなくならないでください)