彼女は夜を迷わず選んだ、夏至も通り越して短くなる一方の夜を。
いやそれはわからないはなしだ、日本に彼女がいるとは限らない。早計だったね謝る。
彼女の名前は涙と言う、よく泣くからとか在り来たりな理由でそうなった。つまりこれはいわゆる通称だ。
涙はというと意外とこの名前を気に入っていた、「テレビの中でこの言葉が使われない日はないわ」と言う。涙のお気に入りのミュージシャンも歌のなかでその名を呼ぶし、その小さな自己陶酔だけで彼女は生きてゆけると信じている。あとは些細な食物とか、うたたねとか。