路地裏でキスがしたい


キスがしたいな、と彼女は思った。饒舌に語るその舌の動き、わたしの口のなかで起きてもおかしくないし、唇は綺麗なんだもん。重ねたくなったって不自然じゃないよね。とても自然な衝動、ただキスがしたいってそれだけ。酔ってるし、おかしくない。店を出たら路地裏で駄々をこねよう、ねえキスしようよってしたいんだようってコートの襟を掴んで見上げる。はいはいってあしらわれたら嫌だな、でも困ったりむっとされたりはもっと嫌だ。甘えさせなさいよね。キスしなくてもいいよ、甘えさせてくれればそれでいい。よしよしってしなさいね、ふんだ。恋じゃないのよ、恋じゃ。本当は初めて会ったときから恋だったって訳じゃないの。どうしていいかわからないからこうやっておどけてバカ話してる訳じゃないのよ、あんたあまりに優秀な友人すぎてどうしようもないだけなんだから。別に、






という悶々とした女の子の心情を100行くらい書き綴ってみたら、中身のなさがいっそ前衛的に見えたりしないかしらと思ったけれど、きっともう誰かやっているだろう。何より疲れてしまった。