Twitterで書いたもの


Twitterの診断メーカーで遊んだものがいくつか出てきたので、まだマシなものをいくつか。



『「仕方なく、指を握り締める」キーワードは「最後」』です。 http://t.co/gCQevBx


「そのかわりに」、そう言ってすっと差し出された小指はあんまりに社交辞令じみていて、数秒後にぞっとした。君が低俗なものに見えてしまったことに、そして反射的に指を結んでいた自分の女々しさに。
何がそのかわりだ畜生め。約束だよ指切りね、なんて体よく取り繕ったところで。君の手口は哀しいくらいに見え透いているけれど、「わかってるよ」、そう言いながら笑っていた。僕は笑ったのだ。
慰めにすらならないささやかな契りが、一体なんの代わりになるというのか。
「ありがとね」、君はひらひらと手を振って背を向けてすぐ雑踏の中に消えた。
さて残された僕だけれど、貼りつけた笑みを崩した瞬間、同時に膝から崩れ落ちて甘い熱が瓦解する音がさんざめくだろう。口約束の地に辿り着く方法がなくて、どうしたら君に。ああそうだね失せる前にね、仕方なく残された小指を握り締めて、巡り回る思い出を、止血する。

(120305)


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音楽プレーヤーのシャッフル16番目の曲でかいてみましょう! http://t.co/5Xbvpor → 「Kick (大地を蹴る男) / BUCK-TICK


気配を感じて振り向くと、ののこちゃんが震えていた。
「夢見が悪くて」そう言って朧気に笑ってみせるが、泣き顔のように歪んで見えた腫れ上がった頬は昨日僕が暴力を振るってしまったもので、痛々しくて可哀相だ。
薄着のまま君は擦り寄ってきて「きりくん」そっと唇を寄せた。血の匂いがして、切ってしまったのか、彼女の綺麗な形のあの唇を。

腕を広げると静かに滑りこんでくる。そして、僕はあんまりの光に眩暈を起こした。酷い風にしてみせても、ののこちゃんは無防備に、またここに、まだここにすっぽりと収まる。
そんな風に、どうして、「きりくん」僕は光を抱いていて、あまりにそれは惜しみない。止まない眩暈に見たのは天国か地獄か、口付ければ唾液が落ちた。

(120314)


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「桜、見に行こ」
聞き容れられぬとわかっているけれど、それでも「コンビニ前のさ、公園とか」誘わずにいられなかった。
彼は疲れていて「君は本当にロマンチストだな」とげっそりした顔で呟いた。ううん、違う。本当はね、あなたを外に連れ出す口実が欲しかっただけなの。
「桜はどうにも好かないんだ、なんでかな」
ああそれたぶん同族嫌悪、なんて縁起の悪い発想。散り際の美しき。


(120410)


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台詞お題:「こんにちは、さようなら」「ひどいなあ」「結婚しようか」 http://t.co/lBnqltZ

「やあ、こんにちは」


驚いた。よもや彼にまた会う日がくるとは。ドアの横で小さく座り込んでいた彼は、何を考えているかわからないけれど鋭い目の光をこちらに向けて、その嫌というほどに覚えのある眼光に力が抜けていくのを感じた。


「そして、さようなら」


再び驚いた。咄嗟に彼の腕を掴んだ、逃げたりしないよと彼は笑う。信じられるものか、前もそう言って、彼は消えたのだ。私はなにか言葉を発することも、かと言って素直に腕を離すこともできずにいた。


「久し振りだね」


彼は相変わらず飄々とした様子で、前に会ったときから何も変わっていないように見えた。何年経ったのだろう、その間にも彼は血なまぐさいところへいただろうし、想像もつかないようなこと色々あったに違いないのだ。
どうか幸福な話があるといい、と心から願った矢先「そうそう言おうと思ってた。俺ね、結婚したよ」彼は唐突に切り出した。


「信じてもらえねえの、ひどいなあ」
「ひどいって何よ」
「まあ、おかえり」
「ここわたしんち」


おどけた彼の笑顔に仄かな陰が落ちる。そういうのに目ざとく気づくよう、私はできている。

信じないことを咎めるような「ひどい」であり、信じて貰えないような自分を責めるような「ひどい」だった。それが妙に切なく、どちらも否定したくて腕を離した。あんたも上がりなよ、とひとこと添えて。


「よりによって、あんたが結婚って」
「そう、せっかくだから君とお揃いにしようと思って」
「……え」
「俺は地獄耳だからね。結婚おめでとう、素敵な指輪だ」
「あんたこそ、おめでとう」


そう言うと、彼は小さく噴き出してからりと笑った。


「実はね、もう過去の話」
「はあ」
「形だけだったの、目眩ましっていうか、要するにセーリャクケッコンみたいなもんでさ、利害が一時的に一致したというか。それで数ヶ月でバイバイ」


そう目を細める。私が話す隙をまるで与えない淀みない流れ。「だからさあ」、耳元に寄せられる唇が「結婚しようよ」、流れ込んできて、ホワイトアウト
彼はいつも、私を道連れに飛ぶんだ。

(120425)


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「ゆるしてあげる」意識飛ばしながら君が呟いた言葉が僕の頭を旋回し支配する。「あなたのこと、全部ゆるしてあげる」僕は君に酷いことをしたのに、君は弱々しく抱きしめようとしながら、毒を添えるようにそう囁くんだ。毒が回る、苦しい。君に殺されるって咄嗟に殴ったのに彼女は穏やかに笑って、僕は更に劣等感を。

(120616)


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傘なんて嵩張るしうっかり忘れたら面倒だし、というわけでぐっしょりと重い服で辿り着く、あと何回ここに帰ってこられるか、別にどこでもいいことだけれど。俺はひとりで大丈夫。鏡に向かって呟いた。裏切り者は跡を絶たず、いつかは自分もそうなるのかもしれない、どうでもいい。どうせ届かない。

(120620)