存分に育てば

そこにあるのは美しい肉、肉を束ねた赤い花。苦悶に歪んだ血が沸いて、捻れた頭で笑っている。
あなたほど残虐な子どもには初めて触りました。


花瓶を高くかざして、光が射す、脳まで刺す。そのまま打ち付けて、乱暴に歌い流す。
あなたほど残虐な感情が初めて障りました。


きつく跳ね上がり弾力を充分に活かして、死にに行ったようなものなんですよ、あなたは。おやめなさい、そんな目では何も撃たない。
ああ、はいはい約束の裸電球ですからね、確かに渡しましたよ。


湿気る、回る、大概は地面で起こること。何色のファイルでも手渡すことができるのは、肉の軸をぶらせば済むこと。
テグスを引いて指を切る、深くまで、口を開いてよく笑う。最後まで笑う、決して泣かない生き物なのは特筆すべき。



【見渡す限り総ての真ん中まで天使が届いたって聞いたよ、もしかして必要なものだった?】



摘むまでもない芽ね、肉が泣いているわ、そして花が枯れる。少し浮いた。


(121204 19:27)

路地裏でキスがしたい


キスがしたいな、と彼女は思った。饒舌に語るその舌の動き、わたしの口のなかで起きてもおかしくないし、唇は綺麗なんだもん。重ねたくなったって不自然じゃないよね。とても自然な衝動、ただキスがしたいってそれだけ。酔ってるし、おかしくない。店を出たら路地裏で駄々をこねよう、ねえキスしようよってしたいんだようってコートの襟を掴んで見上げる。はいはいってあしらわれたら嫌だな、でも困ったりむっとされたりはもっと嫌だ。甘えさせなさいよね。キスしなくてもいいよ、甘えさせてくれればそれでいい。よしよしってしなさいね、ふんだ。恋じゃないのよ、恋じゃ。本当は初めて会ったときから恋だったって訳じゃないの。どうしていいかわからないからこうやっておどけてバカ話してる訳じゃないのよ、あんたあまりに優秀な友人すぎてどうしようもないだけなんだから。別に、






という悶々とした女の子の心情を100行くらい書き綴ってみたら、中身のなさがいっそ前衛的に見えたりしないかしらと思ったけれど、きっともう誰かやっているだろう。何より疲れてしまった。

Twitterで書いたもの


Twitterの診断メーカーで遊んだものがいくつか出てきたので、まだマシなものをいくつか。



『「仕方なく、指を握り締める」キーワードは「最後」』です。 http://t.co/gCQevBx


「そのかわりに」、そう言ってすっと差し出された小指はあんまりに社交辞令じみていて、数秒後にぞっとした。君が低俗なものに見えてしまったことに、そして反射的に指を結んでいた自分の女々しさに。
何がそのかわりだ畜生め。約束だよ指切りね、なんて体よく取り繕ったところで。君の手口は哀しいくらいに見え透いているけれど、「わかってるよ」、そう言いながら笑っていた。僕は笑ったのだ。
慰めにすらならないささやかな契りが、一体なんの代わりになるというのか。
「ありがとね」、君はひらひらと手を振って背を向けてすぐ雑踏の中に消えた。
さて残された僕だけれど、貼りつけた笑みを崩した瞬間、同時に膝から崩れ落ちて甘い熱が瓦解する音がさんざめくだろう。口約束の地に辿り着く方法がなくて、どうしたら君に。ああそうだね失せる前にね、仕方なく残された小指を握り締めて、巡り回る思い出を、止血する。

(120305)


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音楽プレーヤーのシャッフル16番目の曲でかいてみましょう! http://t.co/5Xbvpor → 「Kick (大地を蹴る男) / BUCK-TICK


気配を感じて振り向くと、ののこちゃんが震えていた。
「夢見が悪くて」そう言って朧気に笑ってみせるが、泣き顔のように歪んで見えた腫れ上がった頬は昨日僕が暴力を振るってしまったもので、痛々しくて可哀相だ。
薄着のまま君は擦り寄ってきて「きりくん」そっと唇を寄せた。血の匂いがして、切ってしまったのか、彼女の綺麗な形のあの唇を。

腕を広げると静かに滑りこんでくる。そして、僕はあんまりの光に眩暈を起こした。酷い風にしてみせても、ののこちゃんは無防備に、またここに、まだここにすっぽりと収まる。
そんな風に、どうして、「きりくん」僕は光を抱いていて、あまりにそれは惜しみない。止まない眩暈に見たのは天国か地獄か、口付ければ唾液が落ちた。

(120314)


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「桜、見に行こ」
聞き容れられぬとわかっているけれど、それでも「コンビニ前のさ、公園とか」誘わずにいられなかった。
彼は疲れていて「君は本当にロマンチストだな」とげっそりした顔で呟いた。ううん、違う。本当はね、あなたを外に連れ出す口実が欲しかっただけなの。
「桜はどうにも好かないんだ、なんでかな」
ああそれたぶん同族嫌悪、なんて縁起の悪い発想。散り際の美しき。


(120410)


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台詞お題:「こんにちは、さようなら」「ひどいなあ」「結婚しようか」 http://t.co/lBnqltZ

「やあ、こんにちは」


驚いた。よもや彼にまた会う日がくるとは。ドアの横で小さく座り込んでいた彼は、何を考えているかわからないけれど鋭い目の光をこちらに向けて、その嫌というほどに覚えのある眼光に力が抜けていくのを感じた。


「そして、さようなら」


再び驚いた。咄嗟に彼の腕を掴んだ、逃げたりしないよと彼は笑う。信じられるものか、前もそう言って、彼は消えたのだ。私はなにか言葉を発することも、かと言って素直に腕を離すこともできずにいた。


「久し振りだね」


彼は相変わらず飄々とした様子で、前に会ったときから何も変わっていないように見えた。何年経ったのだろう、その間にも彼は血なまぐさいところへいただろうし、想像もつかないようなこと色々あったに違いないのだ。
どうか幸福な話があるといい、と心から願った矢先「そうそう言おうと思ってた。俺ね、結婚したよ」彼は唐突に切り出した。


「信じてもらえねえの、ひどいなあ」
「ひどいって何よ」
「まあ、おかえり」
「ここわたしんち」


おどけた彼の笑顔に仄かな陰が落ちる。そういうのに目ざとく気づくよう、私はできている。

信じないことを咎めるような「ひどい」であり、信じて貰えないような自分を責めるような「ひどい」だった。それが妙に切なく、どちらも否定したくて腕を離した。あんたも上がりなよ、とひとこと添えて。


「よりによって、あんたが結婚って」
「そう、せっかくだから君とお揃いにしようと思って」
「……え」
「俺は地獄耳だからね。結婚おめでとう、素敵な指輪だ」
「あんたこそ、おめでとう」


そう言うと、彼は小さく噴き出してからりと笑った。


「実はね、もう過去の話」
「はあ」
「形だけだったの、目眩ましっていうか、要するにセーリャクケッコンみたいなもんでさ、利害が一時的に一致したというか。それで数ヶ月でバイバイ」


そう目を細める。私が話す隙をまるで与えない淀みない流れ。「だからさあ」、耳元に寄せられる唇が「結婚しようよ」、流れ込んできて、ホワイトアウト
彼はいつも、私を道連れに飛ぶんだ。

(120425)


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「ゆるしてあげる」意識飛ばしながら君が呟いた言葉が僕の頭を旋回し支配する。「あなたのこと、全部ゆるしてあげる」僕は君に酷いことをしたのに、君は弱々しく抱きしめようとしながら、毒を添えるようにそう囁くんだ。毒が回る、苦しい。君に殺されるって咄嗟に殴ったのに彼女は穏やかに笑って、僕は更に劣等感を。

(120616)


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傘なんて嵩張るしうっかり忘れたら面倒だし、というわけでぐっしょりと重い服で辿り着く、あと何回ここに帰ってこられるか、別にどこでもいいことだけれど。俺はひとりで大丈夫。鏡に向かって呟いた。裏切り者は跡を絶たず、いつかは自分もそうなるのかもしれない、どうでもいい。どうせ届かない。

(120620)

収まらない妄想が現実をいつも嘲笑う


数えきれる程度の哀しみで
空をトンだ女の子の話だよ
追いきれる程度の変拍子
脳からぶら下がる藤の花よ


妄想で惨殺した神様の死体の肢体の舌の下に隠されていたから気付かなかったのよ人間たち。
具現化されるほどに逞しく育った健やかなる妄想で惨殺されてしまったから見えなかったの。


ごめんねって囁く程度では
到底生まれるわけがないね
生まれ直すわけだってない
壊すためだけに積み上げる


夢みたいな深度で見つめた
歪む実像は虚像に似ていて
精巧に出来た悪夢より歪む
結局境目で死にたがってた


充分な栄養を摂った病は健やかに下へ下へ伸びゆくから絶望に近い弱気の甘えたニュアンス。


字数を揃えることが出来る
正気を保てる程度の憂鬱
嘆くエネルギーを持て
大いに死にたくなれ
明日も生きている
どうせ死なない
喚く花なのよ
変わらない
安心して
大丈夫
好き


破滅へ導くために自己満足の自問自答と誘導尋問を行う処刑台はこちらですどうぞご覧あれ。


過去形で喋る「神様と心中」

手紙


ここに重なる色彩の計画にもなにも感じなくなってきて、「落下まで3秒だ」本当は宙ぶらりんで静止している。わたしは嘘を重ねた、それは僅かに色付いていた。


どうも空が不穏なのは、季節の所為だと笑って切り落とした。そこには重大な、見過ごしてはいけないなにかがあるように思う。水のことか?いや、きっと水のことだ。


腐りきった符号に這わせるようにして黒い髪が流れ落ちる。侵食、腐敗のイメージと重なったのは偶然の皮肉。なずめ、なずめ。


蟻が一列に並んでいる理由をすでに知ってしまったものだから、だって踏みつける元気はとっくにないんだよ。
ないんだ。
君にあげられるものなんか、なにも。そう、ないんだ。


そこにいてくれればいいと願えば願うほどすり抜けていくものと砂についての考察はまだ足りていない。仕方ないよ、時間は流れるから。
風化していないのに消えてゆく手紙に感じ入ることなんて報われないよな。


君のイノセントがひりついている間に刺されて死にたい。


(110402 18:08)

遠くまで投げられないの

このように世界は定められ、右向け右で動いています。哀しくも求め合っては遠くに手を伸ばし、掴めない星屑を見るも無惨に砕いては「ひとつも残りはしないのよ」意味ありげな視線はイミテーションだからちゃんちゃらおかしいね。そう女の子が女の子を笑う無邪気さ、自覚もなく嘲笑う残酷さ、あなたは何をいちから愛でる?ここから見える?どこなら死ねる?どこでも連れてゆける、ゆくよ。

輪ゴム鉄砲で脅かすことのできる範囲を手放しで可愛がる。

夜明け前には眠りたい闇だよ、今日も神様をひとり葬ったら夢のなかで淫らに死に絶える、そんな世界の真ん中じゃないか。ここはサーカス、ただ手を叩いて歓喜していて。
回り続けたブランコ、ぐるぐるぐるぐ思考反芻の三半規管で麻痺する前に本日はお開き。

さあさ一同、右向け右。白み始めた夜に執念く貼りつく星を砕け。総て消えたそのときには、どこまでだってゆくと誓う、そういうイミテーションをさあさ一同、嘲笑え。



(120216 06:06)