習作

山脈の手首にさくりと刃物をいれて、美しい水は無色透明、そういったものを掬って歩くのだわ。幼少の彼は少し舌が肥えすぎている。
このまま彼の足元からぬかるみはじめてもよかった、何度も死ぬのだ、一度くらいそうしてもよかった。薬指の関節がカタカタと音をたてる、緩やかに軋むのはいつも脳髄、左心房は濁を流す。濁、濁、濁。心音の本当のところです。彼の消えるリズムのはなしです。

私はあなたに嘘をつく必要がありません。ですから。

いつまでも父母の性交について考えていても仕方がないとはいえ、都合よく子宮【??胎内回帰??】のことだけを切り取ることができるはずがないでしょう。さあもっと浅ましく、浅ましいほど鮮やかだとは思いませんか。笑い転げて命を削る。嗜好について思考を巡らせ趣向を凝らせてそれは至高、薄ら汚くされてようやく世界に馴染む。
犯された膣のその奥に、やはりそれでも帰りたい、あなたの本質的な理解に手紙を書きましょう。

注ごう、山脈から絞ったものを。口をつけて奥へ、そして流しいれるから唇を濡らしておくれ。錆びた鉄釘はいまの彼には必要ない。樹々がざわめく噂話は決して悪口ではなく、でも褒められもしない、無関心が満ちる。
きっと彼はここで死ぬのだ、私が言うのだから確かなことよ。無関心に骨を晒す、乱雑に、その奥へ、さあ奥へ。
もうほとんど性交のように、彼は暴かれ続ける。やがてあなたも、私もう済ませました、次のやり方を選びにゆく。それでは、どうせ解脱の出来ないあなたの足元にて。